小さな会社こそ「共創戦略MAP」でフードビジネスに活力を

数回にわたり、「バランス・スコアカード」の研究の先駆者であられる、横浜国立大学大学院教授、エジンバラ大学教授の吉川武男先生のお考えの一部を抜粋引用させて頂いてきました。

最後に先生のまとめを視てみると、

1.「バランス・スコアカード」の機能は以下の4つです。

①「PDCA(計画・実行・チェック・改善)」を確実にできること

②「成果」と「プロセス」を追跡するナビゲーターも役割を果たすこと

③「ビジョン」と「戦略」を、各種経営管理プロジェクトと従業員の日々の業務に落とし込むコミュニケーション機能を持つこと

④企業や行政機関、病院などを戦略志向にすること

 

そして、

2.「バランス・スコアカード」導入の成功・失敗要因

【成功要因】

①経営トップがバランス・スコアカード導入に参加し、責任を持つ

②部門間のコミュニケーションを十分に行い、部門間の戦略が矛盾しないように整合させる

③必要な知識、方法論、雛形、各種ツール、成功事例などに簡単にアクセスできるようにする

 

【失敗要因】

①バランス・スコアカード導入に関するリーダ―シップの欠如。必要性を熱心に主張し続けることが出来ず、一過性に終わる

②組織が未成熟

③マネジメント・システムの統合に失敗。特に経営計画立案や予算編成とバランス・スコアカードの統合に失敗する

④導入プロジェクトの実行力の欠如

と述べられております。

 

では、この「バランス・スコアカード=BSC)」をベースにアレンジした「共創戦略MAP」が、福岡市の当NPCの「共創戦略研究所」という名称のプロジェクトです。

中小規模のフードビジネスや個人の飲食店経営においては、「現場」は現実として、「いかにお客様のほうを向くか」が重要です。

優秀な店長たちは、現場で「お客さまのほうを向いていない」事柄から課題を見つけて、それを改善していく力を備えています。

 

一方で個人の飲食店経営といえども経営者が必ずいて、「これだけのスピード感をもって、このようなことを実現したい」という「ビジョン」があるはずです。

この双方の重要な「現場課題」「全社ビジョン」をつなげる、結びつける役割を果たすのが、実際に導入して実行してみて、BSCが適するという結論に達しました。

 

しかし、中小規模のフードビジネスや個人の飲食店経営が、現在直面している労働力不足を改善しながら、戦略を確実に実行して成果を上げていくには、最初からBSCを導入することは少し重いのではと考えるようになりました。

吉川先生の失敗要因にもあげられる「組織が未成熟」な小さな会社は尚更です。

フードビジネスに新規参入する経営者や女性経営者、そして創業者の後継者などの若手経営者には、BSCの「戦略MAP」の部分が非常にコンパクトで、従業員に「腹落ち」しやすい管理ツールとしても適します。

 

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※「共創戦略研究所」とは、NPCが福岡市で運営するプロジェクト支援事業で、NPCとはネクスト・プラクティス・コンサルティングの略です。