経営者自らが「戦略コミュニケーション」を理解しなければ

バランス・スコアカード(=BSC)は、当初は「多面的な業績評価システム」として世に紹介されました。

その後、「経営戦略」の実行プロセスを管理する「戦略マネジメントの仕組み」として捉えられるようになりました。

さらには、組織内で「経営戦略」に関する情報の共有を促進する「戦略コミュニケーションのツール」としても用いられるようになりました。

 

「戦略コミュニケーション」とは、ただ単に経営者(社長)が自分の考えている「経営戦略」を、従業員に理解させることではありません。

すなわち、一方通行的な「情報の伝達」を指しているわけではありません。

本来、「戦略コミュニケーション」とは組織内の縦方向にも、横方向にも「情報の伝達」をできることが理想です。

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組織内で、縦や横への方向性を持った「情報の伝達」の役割とは、次の3つです。

1.経営者が考える「経営戦略を組織内」に浸透させる役割

これは、トップダウンの「戦略コミュニケーション」であり、上から下への縦方向の垂直展開です。

2.「経営戦略」の見直しにつながる情報を、従業員から経営者にフィードバックする役割

これは、ボトムアップの「戦略コミュニケーション」であり、下から上への縦方向の垂直展開です。

3.組織内のさまざまなレベルで、「経営戦略」についての議論を促進する役割

これは、組織内の水平方向の「戦略コミュニケーション」であり、横方向への水平展開です。

 

昨今の環境変化の激しい経営状況の下では、組織全体が同じベクトル(方向)に向かって活動していくためには、経営者のトップダウンの号令型「戦略コミュニケーション」だけでは不十分と言えます。

「経営戦略」を調整したり、組み替えたりしなければならないような環境変化が起きた(発生した)ならば、現場(従業員)はその情報を迅速に経営者に伝えなければなりません。

また、現場(従業員)が、自ら「経営戦略」を考えながら日々活動すれば、自然と組織全体が「経営戦略」に沿った活動になっているはずです。

 

中小規模のフードビジネスや個人の飲食店経営においても、経営者の考えた「経営戦略」を組織全体に浸透させたいのであれば、経営者自らが「戦略コミュニケーション」の意義を理解し、激変する環境変化や業界の最新動向を読み解くことが必要不可欠となります。

現場(従業員)も現状を打破し、組織改革をしたいのであれば、同様にその意義を理解する必要があります。

 

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