飲食業で「財務の視点」を従業員に落とし込んでいるか
財務分析は、通常「収益性」「成長性」「安全性」の3つの面からでした。
次は「成長性」ですが、
「成長」ですから、伸び率、伸長性でみます。
「成長性」は主に、売上高や利益の伸びです。
会社全体の売上高、売上総利益(粗利益)、営業利益、経常利益の伸び、部門別の売上高や売上総利益の伸びを「時系列」で追いかけます。
それぞれの利益や売上原価、一般管理費や販売促進費あるいはその内訳を、売上高に対する比率と対照して、成長の促進要因は何なのか、逆に阻害要因は何なのかを分析しなければなりません。
しかし、「成長性」は財務分析だけで判断してはいけません。
すなわち、自社の伸長率が高いからと言って、業界動向や市場シェアなどの外部情報を勘案しながら見ていく必要があります。
そして、3つ目の「安全性」ですが、債務(借入金など)履行能力でみていきます。
決算書類上は利益が出ていても、購入代金や従業員の給与の支払い、あるいは借入金の返済に充てる資金が支払期日までに調達できなければ、いわゆる「倒産」に追い込まれます。
「勘定合って銭(ぜに)足らず」とはまさにこのことです。
会社に投融資(投資と融資)を行っている場合は、「倒産」してしまえば資金の回収が困難になることから、この「安全性」の確認は極めて重要と言えます。
「株式上場」の会社のメリットの観点からも、「安全性」は非常に重要です。
自社株式の換金性が高まると、株式交換を利用したM&Aや資本提携などの実施が容易になります。
また信用力向上に伴い、借入条件などの改善が期待できます。
そして、業績拡大時に資金調達を借入金のみに依存する場合と比較して、株式発行による資金調達を行うことにより財務内容の「安全性」(健全性)を高めることができます。
具体的な財務指標でみると、「自己資本比率」の向上です。
「自己資本比率」は、(%)ですから、株主資本÷総資産×100、です。
「自己資本比率」は、会社の「安全性」を把握する尺度として多くの場面で利用されており、一般的にこの比率(%)が高いほど事業リスクに対する許容度が大きいと考えられています。
仮に、株式発行による資金調達を行うことが可能であれば、「自己資本比率」の改善だけでなく、借入条件の改善、仕入条件の改善など、会社がさまざまな取引を行う上で有利に働くと考えられます。
中小規模のフードビジネスや個人の飲食店経営においては、経営者にとっては「釈迦に説法」と思われますが、実は「財務の視点」における「収益性」「成長性」「安全性」は、飲食業の従業員は苦手です。
なぜならば、会議資料などが「損益計算書(PL)」を基に実施されるケースが多いからです。
売上高に対する利益や経費の割合は、損益計算書で分かります。
しかし、自己資本比率をはじめ、その他「財務の視点」は「損益計算書」と「貸借対照表(BS)」をみなければ分かりません。
将来の経営幹部を育てる、暖簾分けを考えているのであれば、「財務の視点」も大切な人材育成です。
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