経営者が主張する「根拠」で従業員は腹落ちしているのか?

「ロジカル・コミュニケーション」では、「相手が反応するために必要な要素を確認すること」が大切で、必要な要素とは、「結論」「根拠」「方法」の3つでした。

「結論」の次に「根拠」のチェックポイントは5つで、

1.「根拠」が裏返しの理由が理由になっていないか

例えば、

①当社は人材紹介(有料職業紹介)事業を今後強化していく。

なぜならば、当社は人材紹介(有料職業紹介)事業の営業力は弱いからである。

②当社は福岡市エリアのフードビジネス事業に市場に参入すべきである。

なぜならば、当社は福岡市に拠点を置きながら、フードビジネス事業には未だ参入していないからである。

 

2.関係が不明(あるいは希薄)な「根拠」になっていないか

例えば、

①今後も少子高齢化傾向が続くので、中期的には人材紹介(有料職業紹介)が有望な事業である。

②スマートフォンやタブレットが爆発的にヒット(普及)したように、当社の携帯型炊飯器も爆発的なヒット(成長)が見込める。

 

3.自分の価値判断のみで、説得力に欠けてはいないか

例えば、

①メニューブックのビジュアル的センスが悪い(自分の意見)から、商品が売れない。

②価格(値段)のわりに美味しい(自分の意見)から絶対に売れるはずだ。

 

4.基準が不明確で、判断できない状況になっていないか

例えば、

①フードビジネス事業は、成長市場が見込めるから参入すべきである。

②人材紹介(有料職業紹介)事業は、リスクが大きいから参入すべきではない。

 

5.同じ「根拠」で反対の主張は成り立たないか

例えば、

①近隣に競合店ができたから、当社の飲食事業は売上が落ちた。

②昨今はデフレ傾向だから、飲食事業は儲からない。

 

上記の5つのどの具体例(あくまでも例え)も「根拠」が不明瞭、不明確で論拠希薄なので、結果、説得力が全くありません。

中小規模のフードビジネスにおいて、経営者や経営幹部に「この事業をしたい」「この市場に参入したい」という主旨の提案をするのであれば、「総論賛成、各論反対」にならないように伝えなければならないと前回述べました。

しかし、実は従業員からの提案だけにフォーカス(焦点をあてる)しているのではなく、中小規模のフードビジネスや個人の飲食店経営において、すべて経営者が上記5つのような「根拠」で意思決定していないかということの問題提起です。

会社を変革するために奮闘する従業員も、会社を更に成長させたい経営者も願いは同じなのですが、そのロジカル・コミュニケーションが欠如していては、決してベクトルを合わせることはないでしょう。

 

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※「共創戦略研究所」とは、NPCが福岡市で運営するプロジェクト支援事業で、NPCとはネクスト・プラクティス・コンサルティングの略です。