移動障壁の3つの種類
業界の外から新たに参入してしてくる場合の「困難さ」を「参入障壁」と呼び、同一業界内の別の「戦略グループ」から参入してくる場合の「困難さ」を「移動障壁」と呼びました。
「移動障壁」は業界内のことなので、「移動障壁」が十分に高ければ、必然的に「参入障壁」はそれ以上の高さになります。
シナジー(相乗効果)などを発揮できる同一業界内の参入が困難ということは、業界の外からの参入は一層困難になると考えられるわけです。
ということは、「移動障壁」を高めれば、企業(会社)は高い利益率を得ることができます。
では、「競争戦略」として「移動障壁」を高めるためにはどうしたらよいのか。
「移動障壁」には3つの要因があります。
1.経済的要因による「移動障壁」
2.組織的要因による「移動障壁」
3.戦略的要因による「移動障壁」
の3つです。
まず、1の経済的要因による「移動障壁」はさらに2つに分類されます。
① 製品ラインの広さ
製品ラインの広さとは、業界内における大手企業そのものです。
大手企業が、例えば大型製品A、中型製品B、小型製品Cまでの幅広い製品ラインナップを有していることは、それにより「移動障壁」を形成しています。
中堅企業が、フルラインナップ化を図ろうとすれば、大きな投資が必要となるからです。
② 垂直統合
垂直統合とは、フードビジネスで最近注目される六次化産業がその例えでしょう。
原料の生産から、製品製造、中間流通から小売店までを垂直に統合することにより、「移動障壁」を形成しています。
他のフードビジネスがこのような統合を進めると、例えば農場や漁場が必要となり、これも大きな投資が必要となってしまいます。
次に、2の組織的要因による「移動障壁」とは、競争の対象となっている製品が、その製造する企業(会社)がどのような事業構造体になっているかということです。
一つの製品を一貫生産することは、すべての部品を取り扱うわけで、これには多額の設備投資が必要となります。
しかし、一貫生産方式は低コスト化や開発多様性などの「競争優位性」を発揮しやすいわけです。
これに対して、部品を購入して生産する企業(会社)は、いろいろな部品を選択しそれなりの付加価値を付けることができるものの、低コストや開発多様性の面では見劣りしてしまいます。
一貫生産方式に切り替えるにしても、これも大きな投資が必要となります。
最後に、3の戦略的要因による「移動障壁」は、移動に伴う戦略変更がその企業(会社)のイメージなどに重大な影響を及ぼすと考えられるものです。
例えば高級路線でブランド展開をする飲食業が、低価格路線へシフトするような場合、高級路線のブランドと低価格路線は戦略的な矛盾があり訴求しにくいので、両者間の移動は実質的には困難になるというものです。
以上のように、一つの戦略グループを構成する企業(会社)は、「移動障壁」を高めるためにはまず、「移動障壁」の種類を理解しておかなければ、デファクトスタンダードを確立することは出来ません。
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※「共創戦略研究所」とは、NPCが福岡市で運営するプロジェクト支援事業で、NPCとはネクスト・プラクティス・コンサルティングの略です。