「美味しさ」は食感がキーワード

「美味しさ」は食べた人個人の感じ方によるので、それを共通の物差しで測ることは難しいことです。

しかし、食べ物の見た目や舌触り、歯ごたえといった物理的性質からくる食感の表現方法は、抽象的な「美味しさ」と比較すると比較的その感覚を伝えやすく、共有できるかもしれません。

 

「美味しさ」を構成する要素は大きく3つで、

① 風味の化学的な美味しさ

② 食感の物理的な美味しさ

③ 情報からの美味しさ です

「美味しさ」の構成要素が上記であるので、「美味しさ」と伝える表現方法は必然的に

① 味覚系の表現方法

② 食感系の表現方法

③ 情報系の表現方法 になります。

 

しかし、「美味しさ」は食べ物の味、香り、食感だけでなく、食べる時の環境や、どこで、誰と、どんな気持ちでということが大きく影響します。

更にその食べる人の育ってきた文化等にも影響されるので、やはり「美味しさ」を共通の物差しで測ることは難しいと言えます。

 

例えば、スポーツをしていて汗をかいた時に飲む水やビールは最高に美味しいと感じます。

これは乾いた身体が水分を欲しているからです。

また長蛇の行例が出来ているお店で長時間並び、その間、匂いといったシズル感で期待を膨らませ、いざ食べるときの満足感は空腹を満たす以上に美味しく感じるはずです。

 

こうした「美味しさ」の物理的性質や、本能や身体が求める自然な感覚も、ビジネスに置き換えるとその表現方法が重要になってきます。

実際にはまだ食べていなくても、「モチモチ」「ぷりぷり」「ふわトロ」といった食感を表現するキーワードは、見たり聞いたりするだけで、その「美味しさ」の感覚を共有できます。

最近では「熱つ熱つ」「厚切り」「山盛り」などの購買意欲をそそる表現が多くみられます。

 

どのキーワードを使うか、どれが売れるかではなく、その時代時代にトレンド(傾向や流行り)でキーワードは順位が変動します。

競争激化の飲食店、フードビジネスでは食べなくても共有できる食感のキーワードは非常に重要です。

特に中小規模や小規模事業のフードビジネスでは同じ商品であっても表現方法だけで差別化ができます。

 

日本では既に少子高齢化、人口減少という時代の中、年齢の高い層が大勢を占め、食べる量も当然減ります。

だからこそ、食べやすく食感や安心安全を「美味しさ」の情報としてうまく表現することが、新しい食べ方の提案や新しい需要の創出、創造につながり、これからの生き残り戦略の1つになります。