業績評価を主体にすると失敗する組織運営

「バランス・スコアカード」を個人の業績評価に使用すると、吉川先生は、「それも結構ですが、個人の業績評価のためだけに『バランス・スコアカード』を導入すると、必ず失敗するでしょう」と述べられております。

部門の業績評価を特に幹部社員、中堅社員の給与や賞与に反映すると、ある現象が生じます。

 

それは業績評価を懸念するばかり、事後(結果)の目標達成率を念頭においた消極的な目標設定になるのです。

各部門が指標を決め、目標値を設定する仕組みは、本来は「ストレッチ」された高い目標を掲げ、それに挑戦するはずものですが、手に届くハードルの低い目標設定が出てきます。

業績評価がある以上、「バランス・スコアカード」や「共創戦略MAP」に限らず、当然の現象かもしれませんが。

 

しかし、「バランス・スコアカード」も「共創戦略MAP」も、「財務の視点」「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」の4つの視点から成り立ちます。

単なる売上高や営業利益率といった「財務の視点」のみの業績評価シートではないということです。

4つの視点があることは、業績のみに偏らず、「自分たちはこの項目だけは責任を持って遂行します」というある種、宣言であり意思表明です。

評価の配分をどうするかによりますが、業績のみに偏ることはないと言えます。

 

「財務の視点」のみに偏らないで、「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」という他の3つの視点がまさにバランスを取ります。

経営をする上で、売上高や営業利益率などの損益計算書の項目を視ていても仕方ありません。

「財務」というのは、最後に出てくる結果の数字に過ぎません。

その他の3つの視点で、「財務」の結果を出すために、「何をどれだけどのようにやるか」ということが結局は重要になります。

しかも「財務」の結果に結びつくためには、「因果関係」で結ばれた「顧客の視点」「業務プロセスの視点」「学習と成長の視点」が一気通貫しないと実現しません。

 

中小規模のフードビジネスや個人の飲食店経営では、評価システムが売上高や営業利益率、それが計画ではなく前年度の対比数値で行われる場合が多く見受けられます。

我社の評価は、業績のみではなく付加する項目があり総合的な評価である言っても、それはお客様の立場に計画の評価でしょうか。

業務プロセスを改善したり、学習し成長するといった計画の評価でしょうか。

「共創戦略MAP」を評価シートに発展させることは大いに結構ですが、まずは単なる業績評価をやめて、総合的な戦略の策定とその計画に対する評価が求められます。

 

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※「共創戦略研究所」とは、NPCが福岡市で運営するプロジェクト支援事業で、NPCとはネクスト・プラクティス・コンサルティングの略です。