『戦略とは何か②-組織レベルで違う内容』

経営学者で一橋大学名誉教授の伊丹敬之先生の『戦略とは何か』の第1回目「企業の基本設計図」に引き続き、全6回のコラムの第2回目、「組織レベルで違う内容」の要約です。

 

戦略という「基本設計図」は、すべての組織の長が自分の率いる組織の活動の長期構想として持つべきものです。

1.社長=企業全体の組織の長

企業全体の活動の設計図としての戦略が必要

2.事業部長

事業部全体の活動の設計図としての戦略が必要

3.製品別責任者(製品別に分かれている場合)

製品別組織の活動の設計図としての戦略が必要

 

1の社長レベルの全社の戦略である「企業戦略」は、複数の事業の間の資源配分や共通の能力基礎を決め、さらに新しい事業を育てるための資源配分や能力育成の設計図です

選択と集中、そして事業全体の組み合わせの妙を出すことが鍵となります。

 

2の事業部長レベルの1つの事業部の戦略である「事業戦略」は、その事業での市場競争に打ち勝つために、顧客にアピールし、競争相手との優位性や違いを作るための設計図です。

競争戦略顧客へのアピール戦略が基本となります。

 

この「企業戦略」と「事業戦略」は内容や鍵がかなり違います。

①「企業戦略」は事業間の資源配分が鍵

②「事業戦略」は市場対応行動のプランが鍵

しかし、事業戦略をただかき集めれば企業戦略になるという例が少なくありません。

 

「戦略」を実行するための細かな活動計画が「戦術」ですが、この「戦略」と「戦術」はよく対比されます。

戦略は一つの組織の長にとって全体の経営のための構想ですが、下部組織の長にも戦略はあります。

しかし、上部組織の長の立場からすれば、下部組織の長の構想は自分の戦略の実行のための構想です。

つまり下部組織の長の構想である戦略は、上部組織の長にとっては戦術となります。

 

また、戦術ばかりで戦略なし、という企業が多いのは、それは現場の戦略はあるが、事業全体、企業全体の戦略がまっとうにないことを意味します。

 

『戦略とは何か③-競争・差別化・個性』