『戦略とは何か④-展開の絵と組織の焦点』

経営学者で一橋大学名誉教授の伊丹敬之先生の『戦略とは何か』の全6回のコラムの第4回目、「展開の絵と組織の焦点」の要約です。

 

第2回に「企業戦略は事業間の資源配分が鍵、選択と集中、そして事業全体の組み合わせの妙を出すことが鍵」と述べました。

事業の組み合わせの妙とは、

1.複数の事業を同時に持つことによって資源や技術の共通利用、ブランド効果など、さまざまな相乗効果が生まれること。

2.既存事業が築いた資源蓄積が新しい事業の発展の基盤となり、その基盤ゆえに新しい事業での事業戦略を有利に展開するシナリオを描けること

要は、現在から未来へとつながる「組み合わせの妙」です。

 

この2つの組み合わせの妙が事業間に設計できるような状態になると、企業戦略は企業の将来の発展への「大きな展開の絵」を描けることになります。

そうした大きな絵が存在すればこそ、事業の選択と集中の納得性が生まれます。

 

事業の集中の意義は、

①規模の経済が使える

②市場での強者だけが享受できる強みを生み出す

③「メリハリによる組織の焦点」が生まれ、人々の知恵とエネルギーを結集しやすくなる。

 

焦点を絞ることからのマイナス面は、絞れば、資源の薄い部分や切る部分も企業内に生まれてきます。

薄い部分、焦点ではない部分も事業として継続するのだから、そこを担当する人々のモラールが心配になります。

しかし、「大きな展開の絵」で全体の中の役割を示しさえすれば、薄い部分、焦点ではない部分の事業も救われます。

 

多くの日本企業では、低業績分野でも「ガンバレ」、高業績分野では「ますますガンバレ」でムダが多すぎ、大きな展開の絵さえあれば、焦点を絞っても全体は保たれます。

 

『戦略とは何か⑤-見えざる資産の蓄積』