『戦略とは何か⑥-3つの落とし穴』
経営学者で一橋大学名誉教授の伊丹敬之先生の『戦略とは何か』の全6回のコラムの第6回目の最終回「3つの落とし穴」の要約です。
『戦略とは何か①』で、戦略を「基本設計図」として定義しましたが、その設計図に何が含まれるべきかを、目標、あるべき姿、そして変化のシナリオという点で整理すると、
戦略とは「企業や事業の将来のあるべき姿と、そこに至るシナリオ」を描いた設計図となります。
この点で3つの落とし穴が生まれます。
【落とし穴1】目標を掲げただけで、それで戦略を作ったと錯覚し、それだけで済ますこと。
将来のあるべき姿は何らかの目標を達成したくて構想するもので、目標やスローガンは戦略ではありません。
その目標を達成できるような事業の姿、企業の姿はどのような姿か、その設計図が戦略なのです。
【落とし穴2】変化のシナリオがないのに、戦略を作ったと勘違いすること。
将来のあるべき姿を描くだけでは「活動の設計図」として不十分です。
現状の姿からその将来への姿へどのように変えていくのか、その変化のシナリオを構想しなければなりません。
従って、「あるべき姿」と「変化のシナリオ」の両方がワンセットでそろってはじめて、戦略を作れたと言えます。
【落とし穴3】戦略の実行は現場だから、作成も現場で思い込み、任せてしまうこと。
「変化のシナリオ」の中でも、第1歩の踏み出し方が重要です。
1.間違うとそれ以降ボタンの掛け違いが生まれたり、変化の最初の障壁を乗り越えられなかったりするから
2.現状のしがらみからの踏み出しなので、エネルギーや工夫が必要となるから
この「第1歩」の具体的な方策は、現場のディテールをよく熟知していないと出てきません。
しかし、現場の成り行き任せではもいけません。
現場が変化の摩擦を避け、当たり障りのない効果の薄いものにしてしまうからです。
戦略は、一つの組織全体を率いるためのものです。
実行部隊の最前線の状況を考慮し、現場の知恵をくみ上げる、しかし最終的な設計と決断は組織の頂点の役割です。
ボトムアップからの合算の戦略作成はありえないということです。
ここまで6回にわたり伊丹先生のコラムの要約を一部抜粋型で記載しました。
この部分は伊丹敬之先生の『経営を見る眼』、サブタイトル「日々の仕事の意味を知るための経営入門」の著書の第13章、14章(P158~P180)に詳しく書かれています。